不動明王(ふどうみょうおう)を簡単に
- 不動明王とは、ひねくれ者を導く「厳しい父親」のような明王。
- 「お不動さん」として日本各地にまつられる。
- 怒りの表情をし、背後では炎がメラメラと燃えさかる。
1.不動明王(お不動さん)とは
不動明王(ふどうみょうおう)とは、ひねくれ者を導く「厳しい父親」のような明王。
日本各地にまつられ、お不動さん・お不動様として親しまれています。
不動という名前には、「人びとを救う決意が揺るがない」という意味があります。
その名が示すように、如来や菩薩が優しく教えを説いても聞かない「ひねくれ者」を、恐ろしい姿によって力ずくで導きます。
不動明王は、平安時代(794~1185年)に弘法大師空海によって密教とともに日本に伝えられました。
密教(みっきょう)とは
仏教とヒンズー教が融合して生まれた、不思議な宗教。
「真言」とよばれる呪文や、「護摩」とよばれる火をたく儀式などが特徴。
大日如来と一体になることによって、人は生きたまま仏になれると説いている(即身成仏)。
不動明王のような強烈な姿の仏は、それまで日本にはいなかったため、初めて目にした人びとはとても驚いたそう。
そのたくましさから大きな人気を集め、国の平和や厄よけなどのご利益をもたらす仏として、日本各地にまつられるようになりました。
不動明王は、宇宙を治める絶対王者である大日如来の化身(生まれ変わり)でもあります。
大日如来のように偉大な心で、ひねくれ者をも見捨てずに救い上げます。
見た目は怖いですが、優しい心をもっているのです。
不動明王への信仰は根強く、今でも日本各地のお寺で不動護摩(不動明王の前で護摩をたく儀式)が盛んに行われています。
2.姿かたち
不動明王が身につけているものは、菩薩とほぼ同じ。
条帛や裙をまとったり、瓔珞・臂釧などのアクセサリーを身につけたりしています。
頭のてっぺんには、「開蓮」または「莎髻」がのっています。
(開蓮とは蓮華の花が開いたもの、莎髻とは蓮華の花が閉じたもののこと)
顔は怒りに満ちた忿怒相をしていますが、人びとを救おうとする優しさも表れています。
左手に羂索、右手に宝剣を持ちます。
(倶利伽羅剣とよばれる、龍の巻きついた剣を持つ像もある)
背後では火焔光がメラメラと燃えさかり、岩座または瑟瑟座に乗ります。
平安時代前期の像
オールバック風の総髪。
両目をカッと見開き、2本の牙は下を向く。
平安時代後期以降の像
くるくるとカールした巻髪。
右目は天、左目は地を向く(天地眼という)。
同じく右の牙は上、左の牙は下に向く(牙上下出という)。
3.不動明王のなかま
(1)五大明王
不動明王は、五大明王(ごだいみょうおう)とよばれる、5体セットの明王のリーダー格でもあります。
五大明王には、不動明王のほかに以下のメンバーがいます。
※天台宗(密教・坐禅などを融合した仏教の宗派)系のお寺では、金剛夜叉明王の代わりに烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)がまつられます。
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五大明王(ごだいみょうおう)を簡単に 五大明王とは、不動ふどう明王を中心とする5体セットの明王。 一丸となって「ひねくれ者」を力ずくで導く。 五智如来ごちにょらいの生まれ変わりでもある。
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(2)そのほかの仲間
(先ほど書いたように)不動明王は、宇宙の絶対王者である
の化身(生まれ変わり)とされています。
また、
を脇侍や眷属として従えることがあります。
4.ご利益
不動明王は、とり年の守り本尊です。
5.有名な像とお寺
- 不動明王坐像および二童子立像/新勝寺[成田山](千葉)
- 不動明王坐像および二童子立像/金剛寺[高幡不動尊](東京)
- 不動明王立像および二童子立像/瀧泉寺[目黒不動尊](東京)
- 立体曼荼羅のうち不動明王坐像/東寺(京都)
- 不動明王立像[波切不動]/高野山 ・南院(和歌山)
- 不動明王立像および二童子立像/真木大堂(大分)
波切(なみきり)不動