烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)を簡単に
- 烏枢沙摩明王とは、炎でけがれを焼きつくす明王。
- 「トイレの神さま」として知られる。
- 五大明王のメンバーの一員。
1.烏枢沙摩明王とは
烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)とは、炎でけがれを焼きつくす明王。
烏枢沙摩という名前は、ウッチュシュマという古代インドの言葉を漢字に置きかえたもの。
ウッチュシュマとはインドの炎の神さまであり、炎を自在に操るとされています。
ウッチュシュマはのちに仏教に取り入れられ、「烏枢沙摩明王」とよばれるようになります。
ウッチュシュマの性格を受けつぐ烏枢沙摩明王には、あらゆる「けがれ」を焼きつくしてキレイなものに変える力があります。
そのため、烏枢沙摩明王を主役とする密教の儀式「烏枢沙摩法(うすさまほう)」を行うと、災いや病魔などをはらえるとされています。
密教(みっきょう)とは
仏教とヒンズー教が融合して生まれた、不思議な宗教。
「真言」とよばれる呪文や、「護摩」とよばれる火をたく儀式などが特徴。
大日如来と一体になることによって、人は生きたまま仏になれると説いている(即身成仏)。
禅宗(坐禅によって心を落ち着かせる教え)のお寺では、「トイレの神さま」として東司(便所)に烏枢沙摩明王がまつられます。
トイレは怨霊や悪魔の出入り口とみなされてきたため、神聖な炎の力で浄化しようという意図があります。
現代では「けがれを焼きつくす」という意味がさらに拡大解釈され、
- 下半身の病気が治る。
- 年をとっても自分でトイレに行ける。
などのご利益があるといわれています。
2.姿かたち
顔や腕の数はさまざまですが、1つの顔をもつ姿が一般的です。
菩薩と同様、条帛や裙をまとったり、瓔珞・臂釧などのアクセサリーを身につけたりしています。
髪は逆立ち(炎髪)、顔は怒りに満ちた忿怒相。
おでこには、第三の目がついていることが多いです。
持ち物は決まっていませんが、法輪・羂索・金剛鈴・数珠などの道具や、宝剣・宝棒・金剛杵・宝戟などの武具を持つことがあります。
背後では火焔光がメラメラと燃えさかり、岩をかたどった岩座に乗ります。
岩座には、毘那夜迦という小さな悪魔が乗ることもあります。
片足を大きく上げて立つ像(丁字像)、片足を手でつかんで立つ像などがあります。
3.烏枢沙摩明王のなかま
烏枢沙摩明王は、五大明王(ごだいみょうおう)とよばれる、5体セットの明王のメンバーに加わることがあります。
五大明王には、以下のメンバーがいます。
※烏枢沙摩明王が加わるのは天台宗(密教・坐禅などを融合した仏教の宗派)系のお寺のみであり、通常は金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)がまつられます。
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五大明王(ごだいみょうおう)を簡単に 五大明王とは、不動ふどう明王を中心とする5体セットの明王。 一丸となって「ひねくれ者」を力ずくで導く。 五智如来ごちにょらいの生まれ変わりでもある。
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4.ご利益
5.有名な像とお寺
- 烏枢沙摩明王立像/海雲寺(東京)
- 烏枢沙摩明王立像/瑞龍寺(富山)
- 烏枢沙摩明王立像/可睡斎(静岡)
- 烏枢沙摩明王立像/明徳寺(静岡県伊豆市)
- 烏枢沙摩明王立像/宝山寺[生駒聖天](奈良)
“日本一のトイレ”に立つ像
東京ドーム約10個分の広大な境内をもつ「可睡斎」の大東司(便所)は、1937年(昭和12年)につくられた当時では珍しい水洗トイレ。
その広さもモダン感のある建築美も、お寺のトイレの中ではナンバーワン。
中央には見上げるほどの烏枢沙摩明王立像がまつられ、その大きさも日本最大級(総高 約3メートル)。