大威徳明王(だいいとくみょうおう)を簡単に
- 大威徳明王とは、大きな「水牛」に乗っている明王。
- あらゆる悪を打ち倒すのが役割。
- 五大明王のメンバーの一員。
1.大威徳明王とは
大威徳明王(だいいとくみょうおう)とは、大きな「水牛」に乗っている明王。
6本の足をもつことから、六足尊(ろくそくそん)ともよばれます。
大威徳という名前は、ヤマーンタカという古代インドの言葉が語源となっています。
ヤマーンタカには「死神ヤマをも倒す者」という意味があり、それが発展して大威徳(大きな威力をもつ者)とよばれるようになりました。
動きにくい泥の中を突き進む水牛は「困難に打ち勝つたくましさ」を表すことから、大威徳明王には悪を打ち倒す役割があるとされています。
また、敵を倒すための密教の儀式「大威徳調伏法(だいいとくちょうぶくほう)」の主役であり、平安時代(794~1185年)から戦勝祈願の仏としてまつられてきました。
密教(みっきょう)とは
仏教とヒンズー教が融合して生まれた、不思議な宗教。
「真言」とよばれる呪文や、「護摩」とよばれる火をたく儀式などが特徴。
大日如来と一体になることによって、人は生きたまま仏になれると説いている(即身成仏)。
五大明王のメンバーとして、西の方角を守る役割も担います。
2.姿かたち
6つの顔・6本の腕・6本の足をもつ、六面六臂六足(ろくめん ろっぴ ろくそく)の姿が一般的です。
(6本の足は、ほかの仏像には見られない珍しい特徴)
菩薩と同様、肩から斜めに条帛をかけ、瓔珞・臂釧などのアクセサリーを身につけています。
腰に巻きつけたスカートのようなものは、虎皮裙とよばれるトラの皮からつくられた布。
髪は逆立ち(炎髪)、6つの顔はいずれも怒りに満ちた忿怒相。
それぞれの顔のおでこには、第三の目がついています。
(6本の手のうち)真ん中2本の手は檀陀印を結び、そのほかの手は羂索・宝剣・宝棒・宝戟・弓矢・ヘビなどを持ちます。
6本の足は、神の使いである水牛にまたがっています。
- 6つの顔
・・・人間のもつ6つのはたらき(視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚、意識)を表す。「自分の感覚にとらわれず、真実を見つめよ」というメッセージとも。 - 6本の腕
・・・仏教の6つの修行(布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧)を成しとげたことを示している。 - 6本の足
・・・六道という6つの世界(天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道)を渡り歩いて人びとを救うことを意味する。
※このほかにも、さまざまな解釈があります。
単独でまつられることは少なく、通常は五大明王のうちの1体としてまつられます。
3.大威徳明王のなかま
(1)五大明王
(先ほど書いたように)大威徳明王は、五大明王(ごだいみょうおう)とよばれる、5体セットの明王のメンバーの一員です。
五大明王には、大威徳明王のほかに以下のメンバーがいます。
※天台宗(密教・坐禅などを融合した仏教の宗派)系のお寺では、金剛夜叉明王の代わりに烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)がまつられます。
あわせて読みたい五大明王とは | 仏像入門ドットコム
五大明王(ごだいみょうおう)を簡単に 五大明王とは、不動ふどう明王を中心とする5体セットの明王。 一丸となって「ひねくれ者」を力ずくで導く。 五智如来ごちにょらいの生まれ変わりでもある。
続きを見る
(2)そのほかの仲間
大威徳明王は、金剛界の五智如来のメンバーである
の化身(生まれ変わり)とされています。
4.ご利益
5.有名な像とお寺
- 大威徳明王騎牛像/石馬寺(滋賀)
- 五大明王のうち大威徳明王騎牛像/大覚寺・霊宝館(京都)
- 五大明王のうち大威徳明王騎牛像/醍醐寺(京都)
- 立体曼荼羅のうち大威徳明王騎牛像/東寺(京都)
- 大威徳明王騎牛像/真木大堂(大分)