見上げるほど巨大なものから、手のひらサイズのものまで、仏像の大きさには驚くほどのバリエーションがあります。
じつは、これらの大きさは勝手に決められているのではなく、あるルールをもとに定められています。
1.仏像のいろいろなサイズ
仏像はそもそも、お釈迦さまをモデルにした像。
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真理を求めて「さとり」を開いた釈迦の存在はあまりにも偉大であったためか、ふつうの大人の3倍ほどもの大きさであったと言い伝えられています。
この釈迦の身長が、仏像の大きさの基準として使われてきました。
(1)大きなサイズ(丈六仏、大仏)
釈迦の身長は4.8メートルほどあったとされ、これを昔の寸法で表すと、1丈 6尺という長さになります。
- 1丈=10尺
- 1尺=約0.3メートル
仏師たちは、この1丈6尺を仏像の大きさの基準として使ってきました。
1丈6尺を略して
丈六
とよび、丈六のサイズでつくられた仏像を丈六仏(じょうろくぶつ)といいます。
この釈迦の身長のサイズで仏像をつくるのが理想的ですが、そんな巨大な仏像ばかりつくっていては、お金も労力もかかってしまいます。
そこで、丈六の半分のサイズの半丈六や、さらにその半分の4尺など、(丈六を基準にして)手ごろなサイズの仏像がつくられるようになったのです。
また、「奈良の大仏」や「鎌倉大仏」のような丈六を超えるサイズの仏像を、大仏(だいぶつ)といいます。
(2)小さなサイズ(念持仏)
部屋や枕もとなどにまつって毎日拝む小さなサイズの仏像を、念持仏(ねんじぶつ)といいます。
念持仏の多くは40~50センチほどの大きさであり、丈六の10分の1のサイズや、そのほかの寸法でつくられています。
(3)人間と同じサイズ(等身仏)
ほかにも、人間と同じサイズという基準があります。
これを等身仏(とうしんぶつ)といい、ふつうの大人の身長(1メートル60センチ~1メートル80センチ)の大きさでつくられています。
2.仏像の身長はどこで測るのか
仏像にはいろいろなサイズがあることがわかりましたが、その身長はどの部分で測っているのでしょうか?
(1)像高
人間の身長と同じように、頭のてっぺん(像のいちばん高い部分)から足までを測った高さを、像高(ぞうこう)といいます。
像高には「全体の大きさがパッとわかる」というメリットがある一方で、不便なところもあります。
仏像の中には、十一面観音のように(高垂髻や化仏によって)頭が大きく盛り上がっているものもあれば、地蔵菩薩のように髪をそったものもいます。
この2体を同じ像高でつくろうとすると、高さはそろっても、顔や体の大きさはバラバラになってしまいます。
(2)髪際高
そこで考え出されたのが、髪の生えぎわを基準とした髪際高(はっさいこう)という測り方。
この髪際高を使えば、(十一面観音でも地蔵菩薩でも)髪型や頭の形などに影響されることなく、体の大きさをそろえて仏像をつくることができます。
(3)総高
ほかにも、仏像が乗っている台座も含めた総高(そうこう)があります。
総高は、頭のてっぺんから台座の底までを測った高さです。
解説は、以上です。