千手観音(せんじゅかんのん)を簡単に
- 千手観音とは、「千の手」と「千の目」で人びとを救う観音さま。
- それぞれの手には、バラエティーあふれる道具を持つ。
- 六観音のメンバーの一員。
1.千手観音(千手観音菩薩)とは
千手観音(せんじゅかんのん)とは、「千の手」と「千の目」で人びとを救う観音さま。
正式な名前を、千手千眼観自在菩薩(せんじゅせんげん かんじざいぼさつ)といいます。
千手観音は観音さまの王とされていることから、蓮華王菩薩(れんげおうぼさつ)ともよばれます。
1000本の腕をもち、それぞれの手のひらには目がついています。
この「千の手」と「千の目」で、人びとを救ったり、願いをかなえたりします。
千という数は「無限」の意味をもち、千手観音の慈悲(優しさ)が偉大であることを示しています。
そのため、千手観音は人びとから頼りにされ、奈良時代(710~794年)から現在まで大きな人気を集めています。
西国三十三所をはじめとする全国各地のお寺で、お参りできます。
2.姿かたち
ほかの菩薩と同様、インドの貴族のような華やかな服装をしています。
十一面観音のように、あらゆる方向を見渡す11の顔を頭にのせています。
最大の特徴である「千の手」については、実際には42本の手をもつ像が主流となっています。
【42本の手の区分け】
- 真ん中
・・・4本 - 左側
・・・19本 - 右側
・・・19本
(胸の前で合掌する2本を除いた)40本の手がそれぞれ25の世界を救うとされていることから、
40本 × 25世界 =1000本
つまり、「千手」となります。
本当に手が1000本ある像も
「寿宝寺」「唐招提寺」「葛井寺」の3体の千手観音は、1000本(または1000本近く)の手をもつ像として有名。
3.千手観音の持ち物
持ち物の位置は、仏像によって異なります。
持物 | 詳細 | |
---|---|---|
上 2本 | 合掌印(がっしょういん) | 何も持たず、両手を合わせる。 |
下 2本 | 宝鉢(ほうはつ) | おわんのような食器。食べ物を呼びよせる。 |
上から | 持物 | 詳細 |
---|---|---|
1 | 化仏(けぶつ) | 小さな仏像 |
2 | 日輪(にちりん) | 太陽を表す丸い円 |
3 | 宮殿(きゅうでん) | 仏たちの住む宮殿 |
4 | 五鈷鈴(ごこれい) | 取っ手のついた鈴。美しい音で人びとを励ます。 |
5 | 法輪(ほうりん) | 車輪の形をした輪。迷いの心を消し去る。 |
6 | 五色雲(ごしきうん) | 五色の雲。不老長寿を願う。 |
7 | 宝戟(ほうげき) | やりのような武具。悪を追いはらう。 |
8 | 宝螺(ほうら) | 楽器のほら貝 |
9 | 宝鉤(ほうこう) | 先の曲がった細長い武具。神の助けを得られる。 |
10 | 紅蓮華(ぐれんげ) | 赤色の蓮華の花 |
11 | 玉環(ぎょくかん) | 輪が2つ連なった道具。良い仲間を得られる。 |
12 | 宝剣(ほうけん) | 智慧が込められた剣 |
13 | 払子(ほっす) | 先端に毛や麻などがついた道具。迷いの心をはらう。 |
14 | 髑髏杖(どくろじょう) | 先端にドクロのついたつえ。いのちの大切さを表す。 |
15 | 宝弓(ほうきゅう) | 恵みを授ける弓 |
16 | 羂索(けんさく) | 人びとを救い上げる縄 |
17 | 紫蓮華(しれんげ) | 紫色の蓮華の花 |
18 | 水瓶(すいびょう) | 願いをかなえる水の入った瓶 |
19 | 傍牌(ぼうはい) | 龍の顔が描かれた盾。悪を追いはらう。 |
上から | 持物 | 詳細 |
---|---|---|
1 | 化仏(けぶつ) | 小さな仏像 |
2 | 月輪(がちりん) | 月を表す丸い円 |
3 | 宝鏡(ほうきょう) | 智慧を授ける鏡 |
4 | 三鈷杵(さんこしょ) | きねの形をした武具。迷いの心を打ち砕く。 |
5 | 宝珠(ほうじゅ) | 玉ねぎの形をした玉。あらゆる願いをかなえる。 |
6 | 経箱(きょうばこ) | 経巻を入れる箱 |
7 | 錫杖(しゃくじょう) | 先端に輪のついた長いつえ。悪を追いはらう。 |
8 | 経巻(きょうかん) | お経が書かれた巻物 |
9 | 独鈷杵(とっこしょ) | きねの形をした武具。迷いの心を打ち砕く。 |
10 | 青蓮華(しょうれんげ) | 青色の蓮華の花 |
11 | 宝印(ほういん) | 卍(まんじ)が刻まれた四角い印 |
12 | 鉞斧(えっぷ) | 迷いの心を断ち切るオノ |
13 | 楊柳(ようりゅう) | 柳の枝。人びとの病を治す。 |
14 | 蒲桃(ぶどう) | 果物のブドウ。五穀豊穣を願う。 |
15 | 宝箭(ほうせん) | 恵みを授ける矢 |
16 | 数珠(じゅず) | 葬儀や法要でおなじみの数珠 |
17 | 白蓮華(びゃくれんげ) | 白色の蓮華の花 |
18 | 胡瓶(こへい) | 鳥の頭の形をした水さし |
19 | 施無畏印(せむいいん) | 何も持たず、手のひらをさし出す。 |
お経に忠実に従いながらいかに美しくつくり上げるかが、仏師の腕の見せどころです。
4.千手観音のなかま
(1)六観音
千手観音は、六観音(ろくかんのん)とよばれる、6体セットの観音菩薩のメンバーの一員です。
六観音には、千手観音のほかに以下のメンバーがいます。
※天台宗(密教・坐禅などを融合した仏教の宗派)系のお寺では、准胝観音の代わりに不空羂索観音(ふくうけんさくかんのん)がまつられます。
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六観音(ろくかんのん)を簡単に 六観音とは、観音さまが変身する6つの姿のこと。 多くの顔や腕をもつ、超人的な姿かたちをしている。 「六道ろくどう」という苦しみの世界を管理する。
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(2)そのほかの仲間
千手観音は、
を眷属として従えることがあります。
二十八部衆は、バラエティーに富んだ28体の神さまからなるグループであり、千手観音を取り囲んで守ります。
5.ご利益
千手観音は、ねずみ年の守り本尊です。
6.有名な像とお寺
- 千体千手観音立像/三十三間堂(京都)
- 千手観音菩薩立像/寿宝寺(京都)
- 千手観音菩薩坐像/葛井寺(大阪)
- 千手観音菩薩立像/唐招提寺(奈良)
- 千手観音菩薩立像/道成寺(和歌山)
1001体もの千手観音像
京都の春の風物詩・通し矢で知られる「三十三間堂」には、1001体もの千手観音立像が、約100メートルにわたってずらりと並ぶ。
その壮大な光景は、まるで“千手観音の森”のよう。