十一面観音(じゅういちめんかんのん)を簡単に
- 十一面観音とは、頭に「11の顔」をのせた観音さま。
- あらゆる方向を見渡し、人びとを救う。
- 六観音のメンバーの一員。
1.十一面観音とは
十一面観音(じゅういちめんかんのん)とは、頭に「11の顔」をのせた観音さま。
さまざまな表情をした11の顔であらゆる方向を見渡し、人びとを苦しみから救ったり、願いをかなえたりします。
十一面観音の教えを説いたお経によると、
- 十種勝利(じゅっしゅしょうり)
- 四種功徳(ししゅくどく)
という2つのタイプのご利益をもたらすとされています。
十種勝利とは
この世での10種類のご利益
- 病気にならない。
- あらゆる如来に受け入れられる。
- お金や食べ物に困らない。
- あらゆる敵からダメージを受けない。
- 国王(皇族)が苦労をねぎらってくれる。
- 毒にあたらず、悪寒や発熱がひどくならない。
- あらゆる凶器から身を守る。
- 溺死しない。
- 焼死しない。
- 不慮の事故で死なない。
四種功徳とは
あの世での4種類のご利益
- 亡くなる際に如来と会える。
- 地獄に生まれ変わらない。
- 早死にしない。
- 極楽浄土に生まれ変わる。
十一面観音は「この世」でも「あの世」でも人びとを救ってくれることから、昔から大きな人気を集めています。
日本では奈良時代(710~794年)から盛んにつくられ、全国各地のお寺でお参りできます。
2.姿かたち
ほかの菩薩と同様、インドの貴族のような華やかな服装をしています。
宝冠・瓔珞・臂釧などのアクセサリーを身につけ、蓮華や水瓶などを手に持ちます。
立っている像(正立像)が一般的ですが、座っている像(坐像)も一部あります。
最大の特徴である頭上の「11の顔」には、次のような表情があります。
※イラストは、頭のてっぺんから見おろしたもの。
【11の顔の表情】
- 菩薩面(ぼさつめん)
・・・優しい顔 - 瞋怒面(しんぬめん)
・・・怒った顔 - 狗牙上出面(くげじょうしゅつめん)
・・・牙を出した顔 - 暴悪大笑面(ぼうあくだいしょうめん)
・・・大笑いしている顔 - 仏面(ぶつめん)
・・・無表情の顔
頭上には、11の顔とは別に「化仏」という小さな仏像ものっています。
菩薩面(正面 3つ)は、人びとを救おうとしている菩薩の顔。
瞋怒面(向かって右 3つ)は、「悪いことをしちゃダメ」と人びとを叱っている顔。
狗牙上出面(向かって左 3つ)は、「よい行いをしようね」と人びとを励ましている顔。
暴悪大笑面(後ろ)は、「わっはっは!」と悪い行いを笑い飛ばし、人びとの心を改めさせようとしている顔。
仏面(てっぺん)は、さとりを開いた如来の顔。
人びとの究極の理想を表しています。
3.十一面観音のなかま
十一面観音は、六観音(ろくかんのん)とよばれる、6体セットの観音菩薩のメンバーの一員です。
六観音には、十一面観音のほかに以下のメンバーがいます。
※天台宗(密教・坐禅などを融合した仏教の宗派)系のお寺では、准胝観音の代わりに不空羂索観音(ふくうけんさくかんのん)がまつられます。
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六観音(ろくかんのん)を簡単に 六観音とは、観音さまが変身する6つの姿のこと。 多くの顔や腕をもつ、超人的な姿かたちをしている。 「六道ろくどう」という苦しみの世界を管理する。
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4.ご利益
5.有名な像とお寺
- 十一面観音菩薩立像/長谷寺[長谷観音](神奈川県鎌倉市)
- 十一面観音菩薩立像/向源寺(滋賀)
- 十一面観音菩薩立像/道明寺(大阪)
- 十一面観音菩薩立像/聖林寺(奈良)
- 十一面観音菩薩立像/長谷寺(奈良県桜井市)
- 十一面観音菩薩立像/法華寺(奈良)
長谷寺(はせでら)式十一面観音
日本各地にある長谷寺の十一面観音像は、右手に錫杖を持つ珍しい様式のため、「長谷寺式十一面観音」とよばれる。
なかでも、鎌倉と奈良の2体(全長 約10メートル)は、巨大な十一面観音像として有名。