虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)を簡単に
- 虚空蔵菩薩とは、広大な智慧で人びとの願いをかなえる菩薩。
- その智慧は、記憶力・音楽・芸術などの技能をも含む。
- 智慧の込められた「宝剣」がトレードマーク。
1.虚空蔵菩薩とは
虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)とは、広大な智慧で人びとの願いをかなえる菩薩。
智慧(ちえ)とは
真実を見抜くための、気づきの力のこと。
知識や勉強をとおして身につける「知恵」とは異なる。
虚空蔵という名前には、「あらゆるものが詰まった無限の宝庫」という意味があります。
虚空蔵菩薩は(この4次元ポケットのような宝庫から)その人に必要な智慧を取り出し、願いをかなえてくれます。
弘法大師空海は、虚空蔵菩薩の呪文を100万回唱える虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)という修行によって、超人的な記憶力を身につけたといわれています。
虚空蔵菩薩の智慧は(記憶力だけでなく)音楽・芸術などの技能にまでおよび、学業成就・諸芸上達のご利益があるとされています。
- 文殊菩薩の智慧
・・・人びとを幸せへと導くための教え - 勢至菩薩の智慧
・・・地獄に落ちる人を救えるほどの、強力な智慧 - 虚空蔵菩薩の智慧
・・・記憶力・音楽・芸術などの技能をも含む、広大な智慧
同じ智慧でも、あつかう仏が違えば、そのはたらきも変わります。
13歳になった子どもが虚空蔵菩薩をお参りして智慧を授かる十三参り(じゅうさんまいり)という風習が、今でも日本各地に残っています。
2.五大虚空蔵菩薩
虚空蔵菩薩には、五大虚空蔵菩薩という別バージョンがあります。
五大虚空蔵菩薩とは、虚空蔵菩薩のもつ智慧を5体に分身させたもの。
法界虚空蔵を中心にして、4体がそれぞれ東西南北に並びます。
【五大虚空蔵菩薩】
- 法界(ほうかい)虚空蔵
・・・中央 - 金剛(こんごう)虚空蔵
・・・東 - 宝光(ほうこう)虚空蔵
・・・南 - 蓮華(れんげ)虚空蔵
・・・西 - 業用(ごうよう)虚空蔵
・・・北
この5体は、それぞれ次のような智慧を受けもちます。
【五大虚空蔵菩薩のはたらき】
- 解脱(げだつ)
・・・煩悩(欲望や迷いの心)を断ち切る。 - 福智(ふくち)
・・・「幸福」「富」「智慧」を授ける。 - 能満(のうまん)
・・・願いをかなえる。 - 施願(せがん)
・・・願いを受け止める。 - 無垢(むく)
・・・けがれを清める。
3.姿かたち
ほかの菩薩と同様、インドの貴族のような華やかな服装をしています。
(上のイラストには描かれていませんが)宝冠には、金剛界の五智如来の化仏がついています。
左手に願いをかなえる宝珠、右手に智慧の込められた宝剣を持ちます。
施無畏印・与願印を結ぶ像や、蓮華を持つ像など、例外も多くあります。
五大虚空蔵菩薩は、金剛杵を持つことがあります。
立っている像(正立像)、両足を組んで座っている像(結跏趺坐または半跏趺坐)、足を崩して座っている像(遊戯坐)などがあります。
4.虚空蔵菩薩のなかま
(先ほど書いたように)五大虚空蔵菩薩は、
の化身(生まれ変わり)とされています。
5.ご利益
虚空蔵菩薩は、うし年・とら年の守り本尊です。
6.有名な像とお寺
- 虚空蔵菩薩立像/勝常寺(福島)
- 五大虚空蔵菩薩坐像/神護寺(京都)
- 五大虚空蔵菩薩坐像/東寺(京都)
- 虚空蔵菩薩半跏像/額安寺(奈良)
※奈良国立博物館に寄託(2024年7月現在) - 虚空蔵菩薩坐像/東大寺(奈良)