勢至菩薩(せいしぼさつ)を簡単に
- 勢至菩薩とは、智慧の光で人びとを照らす菩薩。
- ほかの仏とチームを組み、地獄に落ちる人を助け出す。
- 聖なる水の入った「水瓶」がトレードマーク。
1.勢至菩薩とは
勢至菩薩(せいしぼさつ)とは、智慧の光で人びとを照らす菩薩。
智慧(ちえ)とは
真実を見抜くための、気づきの力のこと。
知識や勉強をとおして身につける「知恵」とは異なる。
勢至という名前には「偉大な力を得た者」という意味があり、正式な名前を大勢至菩薩(だいせいしぼさつ)といいます。
その偉大な智慧の力はまばゆい光となり、人びとを照らして迷いから目覚めさせます。
勢至菩薩は、阿弥陀如来・聖観音とともに、地獄行きが決まった人を(智慧の光で)助け出す役割も担います。
(この3者がセットになったものを、阿弥陀三尊という)
- 文殊菩薩の智慧
・・・人びとを幸せへと導くための教え - 虚空蔵菩薩の智慧
・・・記憶力・音楽・芸術などの技能をも含む、広大な智慧 - 勢至菩薩の智慧
・・・地獄に落ちる人を救えるほどの、強力な智慧
同じ智慧でも、あつかう仏が違えば、そのはたらきも変わります。
勢至菩薩は、「月」の化身(生まれ変わり)ともいわれています。
毎月23日の夜に行われる二十三夜講(にじゅうさんやこう)という伝統行事では、地域の人たちが勢至菩薩にお供え物をささげ、月を拝んで悪霊を追いはらいます。
2.姿かたち
ほかの菩薩と同様、インドの貴族のような華やかな服装をしています。
手には何も持たず、ほとんどの像は胸の前で合掌します。
片手で与願印を結んだり、両手を重ね合わせたりする像も、一部あります。
背後では、智慧の光が光背となって輝いています。
(光背の無い像もある)
立っている像(正立像)、両足を組んで座っている像(結跏趺坐または半跏趺坐)、足を崩して座っている像(遊戯坐)、前かがみになって座っている像(跪坐)などがあります。
3.勢至菩薩のなかま
(先ほど書いたように)勢至菩薩は、阿弥陀三尊のメンバーとして
と一緒にまつられます。
4.ご利益
勢至菩薩は、うま年の守り本尊です。
5.有名な像とお寺
- 阿弥陀三尊のうち勢至菩薩坐像/三千院(京都)
- 勢至菩薩坐像/知恩院(京都)
- 阿弥陀三尊のうち勢至菩薩立像/仁和寺(京都)
- 阿弥陀三尊のうち勢至菩薩坐像/長岳寺(奈良)
- 阿弥陀三尊のうち勢至菩薩立像/法隆寺・金堂(奈良)
パリで発見された像
「法隆寺・金堂」の勢至菩薩立像は、明治時代に行方不明になったが、1990年ごろにパリのギメ美術館の収蔵庫で発見される。
現在金堂にまつられている像は、ギメ美術館の像に似せてつくられたもの。