地蔵菩薩(じぞうぼさつ)を簡単に
- 地蔵菩薩とは、自らが身代わりとなって人びとを救う菩薩。
- 「お地蔵さん」として道ばたに多くまつられる。
- お坊さんの姿をし、トレードマークである「錫杖」を持つ。
1.地蔵菩薩(お地蔵さん)とは
地蔵菩薩(じぞうぼさつ)とは、自らが身代わりとなって人びとを救う菩薩。
道ばたに多くまつられ、お地蔵さん・お地蔵様として親しまれています。
紀元前5世紀ごろにお釈迦さま(=釈迦如来)が亡くなってから、その後を継ぐ弥勒如来がこの世に現れるまで、56億7000万年という気の遠くなるような年月がかかるといわれています。
つまり、過去と未来には仏がいるけれど、その間はこの世を守る仏がいない無仏状態なのです。
仏(ほとけ)とは
この世の真理に目覚めて「さとり」(大いなる気づきの心)を得た存在。
仏教を開いた釈迦如来が代表的な例。
そこで、「私がこの世を救いましょう」と役目を買って出たのが、地蔵菩薩。
弥勒如来が出現するまでの間、仏不在のこの世界をしっかりと守ってくれます。
六地蔵
地蔵菩薩の活躍の場は、人間の住むこの世界だけではありません。
六道という6つの世界(天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道)を巡って、さまよう人びとを救い上げます。
六道の中でもっとも苦しみの多い世界である、地獄道。
地蔵菩薩はその地獄の苦しみをも人びとの代わりに受けてくれることから、厄よけや延命(長寿)などが祈願されてきました。
庶民の仏さま
お寺だけでなく道ばたにも多くまつられる地蔵菩薩は、人と人をつなぐ存在でもあります。
主に関西地方で行われる地蔵盆(じぞうぼん)という伝統行事では、地域の子どもたちがお地蔵様のもとに集まり、お菓子をもらったり遊んだりして楽しい時を過ごします。
かさ地蔵のほかにも「とげぬき地蔵」「身代わり地蔵」「しばられ地蔵」「言うな地蔵」などの多くの逸話が残され、庶民にいちばん近い仏として親しまれています。
2.姿かたち
ほかの菩薩たちが華やかに着飾っているのに対し、地蔵菩薩のみ頭をそって袈裟を着たお坊さんの姿で表されます。
左手に願いをかなえる宝珠、右手に悪を追いはらう錫杖を持ちます。
錫杖を持たずに施無畏印を結んだり、両手で合掌したりする像もあります。
(上の2番目のイラストは、もともと持っていた錫杖が失われた像)
なかでも、道ばたにまつられている地蔵菩薩の多くは、子どもを守る神さまとして信仰されてきたため、小柄で可愛らしい姿をしています。
「子どもが健やかに育つように」と、魔よけを意味する赤い頭巾や赤いよだれかけがつけられています。
立っている像(正立像)、両足を組んで座っている像(結跏趺坐または半跏趺坐)、足を崩して座っている像(遊戯坐)などがあります。
3.地蔵菩薩のなかま
あの世の裁判官である
は、地蔵菩薩の化身(生まれ変わり)とされています。
また、地蔵菩薩は
- 掌善童子
- 掌悪童子
という「少年の姿」をした2体の神さまを眷属として従えることがあります。
4.ご利益
5.有名な像とお寺
- 地蔵菩薩立像[とげぬき地蔵]/高岩寺(東京)
- 地蔵菩薩坐像/建長寺(神奈川)
- 延命地蔵菩薩立像/壬生寺(京都)
- 地蔵菩薩立像[鬘掛地蔵]/六波羅蜜寺(京都)
- 地蔵菩薩立像[子安地蔵]/安産寺(奈良)
- 地蔵菩薩立像/東大寺・公慶堂(奈良)
鬘掛(かつらかけ)地蔵
空也上人の寺として知られる「六波羅蜜寺」の地蔵菩薩立像は、左手に本物の髪の毛をにぎりしめていることから、「鬘掛地蔵」とよばれている。
(伝説によると)にぎりしめた髪の毛は、この地蔵菩薩に救われた女性がお布施の代わりに渡したものだそう。