阿弥陀如来(あみだにょらい)を簡単に
- 阿弥陀如来とは、人びとを「極楽浄土」に導く如来。
- 永遠のいのちをもち、まばゆい光を放っている。
- 9種類の手のポーズを使い分ける。
1.阿弥陀如来(阿弥陀さま)とは
阿弥陀如来(あみだにょらい)とは、人びとを「極楽浄土」に導く如来。
阿弥陀さまとして親しまれています。
阿弥陀という名前は、アミターバまたはアミターユスという古代インドの言葉を漢字に置きかえたもの。
アミターバ(アミターユス)には、「無限のいのち(光)」という意味があります。
その名のとおり、阿弥陀如来は永遠のいのちをもち、まばゆい光で人びとを照らします。
極楽浄土とは、宇宙の西の果てにある、阿弥陀如来の住む世界のこと。
正式には西方極楽浄土(さいほうごくらくじょうど)といい、私たちになじみのある「極楽」という言葉の語源となっています。
極楽浄土は黄金に彩られたとても美しい場所であり、苦しみのない理想の世界であるといわれています。
平安時代(794~1185年)の終わりごろ、日本では末法思想が流行しました。
末法(まっぽう)思想とは
(お釈迦さまが亡くなってから2世紀ほど経った)平安時代の終わりごろに仏教が消滅し、人びとが救われなくなるという考え方
不安になった人びとは、つらい現実から逃れて極楽浄土に行きたいと願い、阿弥陀如来への信仰が盛んになりました。
阿弥陀如来は「南無阿弥陀仏」と唱えるすべての人を極楽浄土に導いてくれることから、昔から大きな人気を集めています。
2.姿かたち
ほかの如来と同様、納衣を一枚まとっただけの簡素な姿で表されます。
頭のてっぺんはコブのようにふくらみ(肉髻)、髪がくるくると丸まって(螺髪)、無表情な顔つき(半眼)をしています。
(おでこには白毫がついている)
手には何も持たず、九品往生印というポーズをとります。
背後では、放射光・二重円光・舟形光のいずれかが輝いています。
立っている像(正立像)と、両足を組んで座っている像(結跏趺坐)があります。
また、阿弥陀如来像の中には、次のようなユニークな姿をしたものもあります。
- 五劫思惟阿弥陀仏
・・・アフロヘアーのような髪型をした像(五劫院、道成寺などに安置) - 見返り阿弥陀
・・・後ろを振り返っている像(禅林寺に安置)
3.九品往生印(九品来迎印)
阿弥陀如来の住む極楽浄土は9つの世界に分かれており、この世での行いによって、その人の行き先が決まるといわれています。
阿弥陀如来は、亡くなった人を迎えにくる際、その人の行き先に応じた手のポーズをとります。
この9種類の手のポーズを、九品往生印(くほんおうじょういん)または九品来迎印(くほんらいごういん)といいます。
補足
阿弥陀如来が亡くなった人を迎えにくることを、「来迎」という。
九品往生印には、大きく分けて
の3種類があります。
さらに、この3種類にはそれぞれ
- 上生(じょうしょう)
・・・「人さし指」を曲げたパターン - 中生(ちゅうしょう)
・・・「中指」を曲げたパターン - 下生(げしょう)
・・・「薬指」を曲げたパターン
の3つのパターンがあります。
上品 【定印】 | 中品 【説法印】 | 下品 【来迎印】 | |
---|---|---|---|
上生 | 「人さし指」を 上品上生 | 「人さし指」を 中品上生 | 「人さし指」を 下品上生 |
中生 | ★Aの「中指」を 曲げたパターン上品中生 (中品上生) | ★Bの「中指」を 曲げたパターン中品中生 (〃) | ★Cの「中指」を 曲げたパターン下品中生 (中品下生) |
下生 | ★Aの「薬指」を 曲げたパターン上品下生 (下品上生) | ★Bの「薬指」 曲げたパターン中品下生 (下品中生) | ★Cの「薬指」を 曲げたパターン下品下生 (〃) |
※()内・・・「上品・中品・下品」と「上生・中生・下生」は、それぞれ呼び名が入れ替わることがあります。
1体の阿弥陀如来が、これらのポーズを使い分けているのです。
4.阿弥陀如来のなかま
(1)五智如来
阿弥陀如来は、五智如来(ごちにょらい)とよばれる、5体セットの如来のメンバーの一員です。
五智如来には、阿弥陀如来のほかに以下のメンバーがいます。
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(2)そのほかの仲間
阿弥陀如来は、以下の仏像を脇侍や眷属として従えることがあります。
5.ご利益
阿弥陀如来は、いぬ年・いのしし年の守り本尊です。
6.有名な像とお寺
- 阿弥陀三尊および諸尊像/中尊寺(岩手)
- 阿弥陀如来坐像[鎌倉大仏]/高徳院(神奈川)
- 阿弥陀三尊像/善光寺(長野)
- 九体阿弥陀如来坐像/浄瑠璃寺(京都)
- 阿弥陀如来坐像/平等院(京都)
- 阿弥陀三尊像/浄土寺(兵庫県小野市)
9体が一列に並ぶレアな像
京都と奈良の境に位置する「浄瑠璃寺」の“九体阿弥陀如来坐像”は、9体の阿弥陀如来が横一列にずらりと並ぶ珍しい様式。
この様式は平安時代に流行したが、9体すべてが残っているのは浄瑠璃寺のみ。