梵天(ぼんてん)を簡単に
- 梵天とは、お釈迦さまに教えを広めるようアドバイスした神さま。
- 帝釈天とペアを組み、仏教を守護する。
- さまざまな道具を手に持ち、4羽の白い鳥に乗る。
1.梵天とは
梵天(ぼんてん)とは、お釈迦さまに教えを広めるようアドバイスした神さま。
もともとはブラフマーという名のインドの神さまであり、お釈迦さま(=釈迦如来)が仏教を開く前から、宇宙を創造した神として信仰されていました。
長く厳しい修行の末に「さとり」(大いなる気づきの心)を得た釈迦は、木の下で坐禅を組みながら次のように考えていました。
私の発見した真理は、難しすぎて人びとには理解できないだろう。
だから、私は教えを説かずにこのまま永遠の眠りにつこう……
そこで、梵天があわてて天からおりてきて、「あなたの教えによって花を咲かせる人がいます。どうか説き聞かせたまえ!」と釈迦を必死に説得します。
梵天の熱意に心を動かされた釈迦は人びとに教えを説くことを決意し、その教えはやがて仏教となって広まります。
この逸話は、梵天勧請(ぼんてんかんじょう)とよばれています。
梵天は、帝釈天という勇敢な神さまとペアを組み、仏教を守護する役割を担います。
単独でまつられることはほぼ無く、帝釈天と一緒に並んだり、釈迦如来の脇侍としてまつられたりします。
2.姿かたち
釈迦如来の脇侍としてまつられる場合は、釈迦如来を中心にして向かって右に梵天、向かって左に帝釈天が並びます。
(この配置形式を釈迦三尊という)
梵天像には、以下の2つのタイプがあります。
(1)中国風の衣装を着て立つ像
主に飛鳥時代(592~710年)につくられた、古いタイプの像
1つの顔と2本の腕をもつ、人間に近い姿で表されます。
(2)4羽の白い鳥の上に座る像
平安時代(794~1185年)以降につくられた、密教に特有の像
密教(みっきょう)とは
仏教とヒンズー教が融合して生まれた、不思議な宗教。
「真言」とよばれる呪文や、「護摩」とよばれる火をたく儀式などが特徴。
大日如来と一体になることによって、人は生きたまま仏になれると説いている(即身成仏)。
4つの顔と4本の腕をもつ、四面四臂(しめんしひ)の姿で表されます。
(1)のタイプと同じく髪を高く結い上げ(垂髻)、おでこには第三の目がついています。
4本の手は、蓮華・独鈷戟・払子などを持ったり、与願印を結んだりします。
4羽の白い鳥は「聖鳥ハンサ」とよばれ、その背の上の蓮華座に梵天が座ります。
3.梵天のなかま
(先ほど書いたように)梵天は、釈迦三尊のメンバーとして
と一緒にまつられることがあります。
また、水の女神である
を妻にもちます。
のメンバーの一員でもあります。
二十八部衆においては、「大梵天王」という名前でよばれます。
4.ご利益
5.有名な像とお寺
- 梵天・帝釈天立像/瀧山寺(愛知)
- 立体曼荼羅のうち梵天坐像/東寺(京都)
- 梵天・帝釈天立像/興福寺・国宝館(奈良)
- 梵天・帝釈天立像/唐招提寺(奈良)
- 梵天・帝釈天立像/東大寺(奈良)
- 梵天・帝釈天立像/法隆寺・大宝蔵院(奈良)
聖観音と一緒に並ぶレアな像
鎌倉時代から800年続く“鬼祭り”で知られる「瀧山寺」の梵天・帝釈天立像は、聖観音の脇侍としてまつられている珍しいケース。
のちの時代に施された鮮やかな彩色が、今もきれいに残っている。