妙見菩薩(みょうけんぼさつ)を簡単に
- 妙見菩薩とは、「北極星」が神さまとなって現れたもの。
- すぐれた視力をもち、眼病平癒をはじめとする多くのご利益をもたらす。
- 童女形(少女の姿)・能勢形(武士の姿)の2つのタイプがある。
1.妙見菩薩(妙見さん)とは
妙見菩薩(みょうけんぼさつ)とは、「北極星」が神さまとなって現れたもの。
名前に菩薩とありますが、天部グループに属します。
妙見さん・妙見さまとして親しまれ、妙見大菩薩(みょうけんだいぼさつ)・北辰菩薩(ほくしんぼさつ)ともよばれます。
真北の空にきらめく北極星は、地球から見るといつも同じ場所で輝いているため、古くから北の方位を教えてくれる大切な星とされてきました。
とくに古代中国においては、太陽・月・星の動きは神秘的なものとされ、その中心にある北極星を「星の王」としてあがめていました。
この中国の思想の影響を受け、日本では「菩薩」の名がついた北極星の神さま・妙見菩薩が生まれます。
妙見という名前には「すぐれた視力」という意味があり、妙見菩薩を主役とした密教の儀式「妙見法(みょうけんほう)」では、眼病平癒が祈願されてきました。
密教(みっきょう)とは
仏教とヒンズー教が融合して生まれた、不思議な宗教。
「真言」とよばれる呪文や、「護摩」とよばれる火をたく儀式などが特徴。
大日如来と一体になることによって、人は生きたまま仏になれると説いている(即身成仏)。
また、天皇や政府からは、国家を守る仏として信じられるようになります。
武士には戦勝祈願の仏として、庶民には開運・商売繁盛・縁結び・五穀豊穣・航海安全などをもたらす神として、あがめられるようになります。
さらに、日蓮宗(『法華経』をよりどころとする仏教の宗派)においては、学問の神さまとしてお坊さんの学校にまつられてきました。
加えて、江戸時代(1603~1868年)には劇作家・近松門左衛門らから芸能の神さまとして信仰され、今でも芸能人やクリエイターなどから人気を集めています。
2.姿かたち
妙見菩薩像にはさまざまな形式がありますが、中でも
- 童女(どうにょ)形
・・・少女の姿をした像 - 能勢(のせ)形
・・・武士の姿をした像
の2つのタイプが広く知られています。
(1)童女形
古いタイプの像
貴人服をまとった少女の姿で表され、その姿かたちは吉祥天に似ています。
宝剣や宝珠などを手に持ち、カメまたは龍の背中に乗ります(正立像)。
(2)能勢形
平安時代後期以降の像
甲冑に身を固めた、武士の姿で表されます。
すべてを見通すような鋭い目つきをし、右手に持った刀を頭上にかざしながら、左手で刀印を結びます。
立っている像(正立像)は無く、岩座の上に座っている像(坐像)が多く見られます。
3.妙見菩薩のなかま
妙見菩薩は、
などの化身(生まれ変わり)とされています。
4.ご利益
5.有名な像とお寺
- 妙見菩薩立像、妙見菩薩坐像/円泉寺(埼玉県飯能市)
- 妙見菩薩立像[鷲妙見大菩薩]/長國寺(東京)
- 妙見菩薩坐像/能勢妙見山(大阪)
- 妙見菩薩坐像/本瀧寺(大阪)
- 妙見菩薩立像/法輪寺(奈良県生駒郡)
ワシに乗っているレアな像
“浅草酉の市”の発祥地として知られる「長國寺」の秘仏・妙見菩薩立像は、ワシの背中に乗っている珍しいスタイル。
この像は「鷲妙見大菩薩」とよばれ、毎年11月の酉の日に合わせて公開される。