摩利支天(まりしてん)を簡単に
- 摩利支天とは、「かげろう」が神さまとなって現れたもの。
- 忍者のように身を隠すのが得意。
- 男神・女神の2つのタイプがある。
1.摩利支天とは
摩利支天(まりしてん)とは、「かげろう」が神さまとなって現れたもの。
かげろうとは
日ざしの強い晴れた日に、空気が炎のようにゆらゆらと揺れて見える自然現象
摩利支天は、もともとはマーリーチという名のインドの神さまであり、かげろうや太陽の光をイメージした女神として信仰されていました。
マーリーチはのちに仏教に取り入れられ、「摩利支天」とよばれるようになります。
かげろうは形が無く、つかまえることもできないため、摩利支天には
- (相手から姿が見えず)攻撃を受けない。
- (自分のほうは相手が見えるため)望みどおりに行動できる。
という性質があります。
このことから、開運・戦勝祈願・厄よけなどのご利益があるとされ、武士や忍者などから大きな人気を集めました。
また、『阿娑縛抄』という仏教の書物の中に、次のような逸話が残されています。
帝釈天を守った摩利支天
帝釈天と阿修羅の戦いが起こったときのエピソード。
帝釈天に味方した摩利支天は、超能力を使って3歳児に変身し、さらに太陽と月の光を遮って阿修羅を惑わせます。
その後、摩利支天は突然姿を消して阿修羅の目をくらませ、帝釈天を勝利へと導いたそうです。
2.姿かたち
摩利支天像には、男神(おがみ)と女神(めがみ)の2つのタイプがあります。
(1)男神像
3つの顔と6つの腕をもつ、三面六臂(さんめんろっぴ)の姿で表されます。
(一面二臂、三面八臂の像も一部ある)
髪は逆立ち(炎髪)、3つの顔はさまざまな表情をしています(慈悲相や忿怒相など)。
それぞれの顔のおでこには、第三の目がついていることがあります。
蓮華座を背負ったイノシシに乗り、まっすぐに立ったり(正立像)、片足を大きく上げて立ったり(丁字像)します。
男神像がイノシシに乗っているのには、
- 摩利支天が疾走する様子をイノシシに例えた。
- 摩利支天の勇敢さを表現した。
- イノシシは神の使いとされ、古くから摩利支天となじみがあった。
などの説があります。
(2)女神像
摩利支天は、もともとはインドの女神であったため、美しい天女の姿で表されることもあります。
左手で天扇(長い取っ手のついたうちわ)を持ち、右手で与願印を結び、蓮華座の上に半跏趺坐をして座ります。
3.摩利支天のなかま
摩利支天は、宇宙を創造した神さまである
の子であるといわれています。
4.ご利益
摩利支天は、いのしし年の守り神でもあります。
5.有名な像とお寺
- 摩利支天騎猪像/徳大寺(東京)
- 摩利支天騎猪像/宝泉寺(石川県金沢市)
- 摩利支天騎猪像/長谷寺(愛知県豊川市)
- 摩利支天騎猪像/禅居庵(京都)
- 摩利支天騎猪像/八栗寺(香川)
日本三大摩利支天
「徳大寺」「宝泉寺」「禅居庵」の3つのお寺は、日本三大摩利支天として知られている。
夢の中から飛び出した像
戦国武将・武田信玄の右腕として活躍した山本勘助は、ある日の夢の中で弘法大師空海から摩利支天像を授かった。
夢から目覚めると、なんとこの像が枕もとにあったという。
のちにこの摩利支天像は、勘助と親交のあった愛知県の「長谷寺」にまつられるようになった。