薬師如来(やくしにょらい)を簡単に
- 薬師如来とは、仏像界のお医者さま。
- 人びとのあらゆる病や苦しみを癒やす。
- 万能薬の入った「薬壺」がトレードマーク。
1.薬師如来(お薬師さん)とは
薬師如来(やくしにょらい)とは、仏像界のお医者さま。
お薬師さん・お薬師様として親しまれています。
「東方瑠璃光浄土」という宇宙の東の果てにある世界に住んでいることから、正式な名前を薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)といいます。
「薬師」とは医者のことであり、大医王(だいいおう)ともよばれます。
仏像界のお医者さまとして、人びとのあらゆる病を癒やしたり、延命(長寿)のご利益をもたらしたりします。
薬師如来の教えを説いた『薬師経』によると、薬師如来は12の誓い(十二大願)を立てて人びとを救うことを決意したとされています。
この大願とは、(病を癒やすことのほかにも)「あらゆる苦しみを取り除く」「衣食住に困らないようにする」など、人びとが本当にかなえてほしい望みを中心にまとめたものです。
十二大願
- 自らの光で世界を照らし、人びとをさとりへと導く。
- その光は強く正しく、迷いを消し去って人びとを仏の世界に導く。
- さとりを得るために必要な、あらゆる品物を授ける。
- 迷う人びとを導くための方法を教える。
- 仏のいましめを破った者を反省させ、その罪を清める。
- 病気や身体的苦痛を取り除く。
- 病や苦しみを癒やし、安らぎを授ける。
- 男女を区別することなく、さとりへと導く。
- 人びとを正しい道に引き入れ、苦しみを浄化する。
- 災いや暴力から解放する。
- 飢えと渇きから解放する。
- 生活に苦しむ人びとに衣服を授ける。
なお、日本各地にある国分寺の多くは、薬師如来を本尊(お寺のメインの仏像)としてまつっています。
国分寺(こくぶんじ)とは
大地震や疫病で混乱した奈良時代(710~794年)、仏教の力で国を守るために聖武天皇が日本各地に建てたお寺
薬師如来は阿弥陀如来と並ぶ人気の仏像であり、全国各地のお寺でお参りできます。
2.姿かたち
ほかの如来と同様、納衣を一枚まとっただけの簡素な姿で表されます。
頭のてっぺんはコブのようにふくらみ(肉髻)、髪がくるくると丸まって(螺髪)、無表情な顔つき(半眼)をしています。
(おでこには白毫がついている)
薬師如来のほとんどは左手に薬壺(万能薬の入ったつぼ)を持ちますが、薬壺を持つようになったのは平安時代(794~1185年)以降であり、それより前の時代の像は薬壺を持ちません。
薬壺を持つ場合(平安時代以降の像)は、右手で施無畏印を結びます。
薬壺を持たない場合(平安時代より前の像)は、右手で施無畏印、左手で与願印を結びます。
立っている像(正立像)と、両足を組んで座っている像(結跏趺坐)があります。
3.薬師如来のなかま
薬師如来は、以下の仏像を脇侍や眷属として従えることがあります。
日光菩薩と月光菩薩は、人びとの苦しみを癒やすために、昼も夜もずっと薬師如来とともに働き続けます。
十二神将(12体の武将)は、薬師如来を取り囲んで守っています。
4.ご利益
5.有名な像とお寺
- 薬師如来坐像/黒石寺(岩手)
- 薬師如来坐像/勝常寺(福島)
- 薬師三尊像/東寺(京都)
- 薬師如来坐像/新薬師寺(奈良)
- 薬師三尊像/薬師寺(奈良)
十二神将にぐるりと囲まれた像
奈良時代の古寺として知られる「新薬師寺」の薬師如来坐像は、十二神将に360度囲まれた珍しい様式。
その光景は、まるで“メリーゴーランド”のよう。