仏教の広まりとともにインドで生まれ、中国・朝鮮半島を渡って日本へたどり着いた仏像。
その姿かたちは、国によってそれぞれ特色があります。
1.インド様式
仏教を開いたお釈迦さまが亡くなってから約500年たった、1世紀ごろ。
インド北部にある「ガンダーラ」と「マトゥラー」の2つの地域で、最初の仏像が誕生しました。
(1)ガンダーラ仏
ギリシアの支配下にあったガンダーラでは、ヘレニズム文化の影響を受けてガンダーラ仏が生まれます。
ガンダーラ仏は、彫の深い西洋人の顔立ちをしているのが特徴。
また、日本の仏像と同じように、納衣・光背・台座などが見られます。
黒っぽい石でつくられている像が多いです。
(2)マトゥラー仏
一方、ヒンズー教の盛んなマトゥラーでは、ガンダーラとは異なる作風のマトゥラー仏が生まれます。
西洋人の顔立ちをしたガンダーラ仏に対して、マトゥラー仏はインド風の顔立ちをしており、全体的に丸みを帯びています。
赤っぽい石でつくられた像が多いです。
このほかにも
- サールナート仏
- トゥルファン仏
などがあり、これらのインド様式が中国に伝わります。
2.中国様式
中国の人びとの間で仏教が広まった4世紀ごろ、中国国内でも仏像が盛んにつくられるようになります。
初めのうちはインド様式の影響を大きく受けていましたが、隋時代(589~618年)になると
- やわらかな肉体表現
- 華やかな装飾品(頭のアクセサリー、衣服の模様など)
などの特徴をもつ中国独自の様式へと変化し、木・銅・粘土などの材料が使われました。
のちの唐時代(618~907年)の像には
- どっしりとして張りのある体形
- キリッと引き締まった顔立ち
などの特徴が見られ、岩山を削った巨大な仏像(石窟)も盛んにつくられます。
3.朝鮮半島様式
中国で仏像が盛んにつくられ始めた4世紀以降、朝鮮半島にも仏像が伝わります。
朝鮮半島の仏像は中国様式の影響を受けていますが、
- 面ながの顔
- 神秘的な表情(アーモンド形の目、アルカイックスマイル)
などの朝鮮半島独自の様式にアレンジされています。
また、5~6世紀ごろの朝鮮半島では、片足を組んで物思いにふけるポーズをした像(半跏思惟像)が大流行しました。
4.日本様式
インドから中国・朝鮮半島を渡って日本にたどり着いた仏像は、この国で大きな変化をとげます。
仏像が日本に伝わって間もない飛鳥時代(592~710年)の像は、中国様式や朝鮮半島様式の影響を受けた「外国風」のものがメインでした。
(銅・粘土・漆などでつくられる)
ところが、平安時代(794~1185年)以降、その様式はがらりと変わります。
- 上品で美しい表現
- 人間のようにリアルで動きのある姿かたち
などの日本独自の様式が生まれます。
日本人になじみ深い「木」が主な材料として使われるようになり、時代ごとにさまざまなスタイルの仏像がつくられました。
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5.タイ様式
国民の9割が仏教徒であるタイでは、古くから仏教が信仰されてきましたが、仏像が盛んにつくられるようになったのは13~14世紀ごろ。
東南アジアに位置するタイの仏像は、シルクロードを経て伝わった中国様式・朝鮮半島様式・日本様式のものとは、ずいぶん雰囲気が違います。
この常夏の国でつくられた仏像はどこか南国的で、
- なめらかな曲線美をもつ体形
- 穏やかなほほ笑み
などのタイ独自の様式が見られます。
また、巨大な金色の像が多いのも特徴であり、石や銅などの材料が使われています。
ここまで世界の仏像の代表的な様式を紹介してきましたが、
- ベトナム
- カンボジア
- ミャンマー
- スリランカ
などのそのほかの仏教国においても、独自にアレンジされた仏像がつくられてきました。
解説は、以上です。