大元帥明王(だいげんすいみょうおう)を簡単に
- 大元帥明王とは、すべての明王のボス。
- 「国の平和」をもたらす仏としてまつられてきた。
- 明王の中では、もっとも恐ろしい姿をしている。
1.大元帥明王とは
大元帥明王(だいげんすいみょうおう)とは、すべての明王のボス。
「師」の字を発音せずにたいげんみょうおうとよんだり、太元明王と書いたりもします。
大元帥明王は、もともとはアータバカという名のインドの人食い鬼であり、人びとから恐れられていました。
アータバカはのちに密教に取り入れられると、大日如来の教えを受けて、人びとを力ずくで導く「明王」へと生まれ変わります。
密教(みっきょう)とは
仏教とヒンズー教が融合して生まれた、不思議な宗教。
「真言」とよばれる呪文や、「護摩」とよばれる火をたく儀式などが特徴。
大日如来と一体になることによって、人は生きたまま仏になれると説いている(即身成仏)。
アータバカは絶大なパワーをもつことから、すべての明王のボスを意味する「大元帥」の名を与えられ、その強さは不動明王にも勝るといわれています。
平安時代(794~1185年)に弘法大師空海の弟子・常暁によって大元帥明王が日本に伝えられると、「大元帥法(だいげんすいほう/たいげんのほう)」の主役としてまつられるようになります。
大元帥法とは国家を守るための密教の儀式であり、明治時代(1868~1912年)の初めまで毎年行われていました。
このような歴史から、大元帥明王は国の平和をもたらす仏として、今でも日本各地にまつられています。
2.姿かたち
(ほかの明王と同様)多くの顔と腕をもち、一面四臂(しめんしひ)から十八面三十六臂(じゅうはちめんさんじゅうろっぴ)まで、その姿はさまざまです。
髪は逆立ち(炎髪)、顔はいずれも怒りに満ちた忿怒相。
それぞれの顔のおでこには、第三の目がついています。
真ん中2本の手のうち左手は、人さし指と小指を立てて残りの指をにぎる「大怒印」を結びます。
そのほかの手は、宝剣・宝棒・金剛杵・宝戟・鉞斧などを持ちます。
背後では火焔光がメラメラと燃えさかり、両足で邪鬼を踏みつけています。
さらに、体中にヘビが巻きついていたり、ドクロの首飾りをさげていたりと、明王の中ではもっとも恐ろしい姿をしています。
3.ご利益
4.有名な像とお寺
- 大元帥明王立像/護国寺(東京)
- 大元帥明王立像/慈光院(富山)
- 大元帥明王立像/醍醐寺(京都)
- 大元帥明王立像/東寺(京都)
- 大元帥明王立像/京善寺(大阪)
- 大元帥明王立像/秋篠寺(奈良)
151年ぶりの儀式
桜の名所として知られる世界遺産の「醍醐寺」では、国の平和を願う儀式「太元帥大法」が昔から行われてきたが、明治維新の混乱によって1871年を最後に途絶える。
それから大正・昭和・平成を経て令和に突入した2022年10月、天皇陛下の即位に合わせて、151年ぶりに同じ地で儀式が営まれた。