金剛力士(こんごうりきし)を簡単に
- 金剛力士とは、たくましい体つきをした「お寺の門番」。
- 参拝者をにらみつけ、悪を追いはらう。
- 「阿形」と「吽形」のペアでまつられる。
1.金剛力士(仁王様)とは
金剛力士(こんごうりきし)とは、たくましい体つきをした「お寺の門番」。
お寺の入り口の両サイドでどっしりと構えている、あの仁王様(におうさま)のことです。
金剛力士は、もともとは執金剛神(しゅこんごうしん)という1体の神さまであり、釈迦如来を守る役割を担っていました。
のちに2体に分身し、お寺の入り口で悪を追いはらう門番となります。
この2体は、それぞれ
- 阿形(あぎょう)
・・・口を開いたほうの像 - 吽形(うんぎょう)
・・・口を閉じたほうの像
とよばれます。
“阿吽の呼吸”の語源でもある「阿」と「吽」は、もともとは古代インドの言葉。
阿は口を開いて「ア」と発音する最初の語、吽は口を閉じて「ウン」と発音する最後の語を表します。
(日本語の五十音が「あ」で始まり「ん」で終わるのも、このため)
そのため、阿吽には「宇宙の始まりから終わりまで」という意味があります。
つまり、阿吽は
- 正反対の2つのもの(例.光と影)
- 世界にあるものすべて
- 大いなる気づきの心
などを表しています。
これらの阿吽の性質から、2体は次のようなはたらきをします。
- 阿形のはたらき
・・・「真実を見つめよ」と、右側からプラスのパワーを放つ。 - 吽形のはたらき
・・・「迷いの心を捨てよ」と、左側からマイナスのパワーを放つ。
このように、金剛力士には参拝者の心を戒める役割もあり、そのたくましい体つきから身体健全・筋力アップ・健脚などのご利益があるとされています。
なお、お寺の入り口の門には、金剛力士がはくとされる「大きなわらじ」が一緒に飾りつけられているのもよく見られます。
飛鳥時代(592~710年)からつくられ始めた仁王様は、(風雨にさらされながらも)何百年もの間ずっと、日本各地のお寺を力強く守り続けています。
2.姿かたち
向かって右側に「阿形」、左側に「吽形」がまつられるのが一般的ですが、左右が逆の例外もあります。
阿形は口を開いて怒りをあらわにし、吽形は口を閉じて怒りを内に秘めます。
体中の筋肉はムキムキと大きく盛り上がり、腹筋もみごとに割れています。
金剛杵という武具を手に持つ像もあれば、(上のイラストのように)何も持たずに大きく構える像もあります。
そして、「仁王立ち」という言葉のとおり、足を大きく開いて立ちます。
(足元には、岩座があることも)
3.金剛力士のなかま
のメンバーの一員です。
二十八部衆においては、阿形は「那羅延堅固」、吽形は「密迹金剛」とよばれます。
4.ご利益
健康運
・・・筋力アップ、健脚なども
5.有名な像とお寺
- 金剛力士立像/萬満寺(千葉)
- 金剛力士立像[赤紙仁王尊]/東覚寺(東京都北区)
- 金剛力士立像/興福寺(奈良)
- 金剛力士立像/東大寺・南大門(奈良)
- 執金剛神立像/東大寺・法華堂(奈良)
- 金剛力士立像/法隆寺(奈良)
仁王さまの股くぐり
鎌倉時代の古寺として知られる「萬満寺」には、金剛力士像の股をくぐって健康を祈る「仁王さまの股くぐり」という伝統行事がある。
とくに脳血管障害の後遺症(半身不随・手足のまひなど)に効くとされ、全国から多くの参拝者が訪れる。
赤紙(あかがみ)仁王
東京・田端の街の一角にたたずむ「東覚寺」の金剛力士立像は、全身に赤い紙がびっしりと貼りつけられていることから、「赤紙仁王」とよばれる。
体の悪いところと同じ部分に赤い紙を貼って祈願し、治るとわらじを奉納するという独自の風習が行われている。