お釈迦さまから学ぶ
あらゆる苦しみから解放されて幸せに生きる方法
(ブッダの教え)
ブッダ(=さとりを開いた人)ともよばれるお釈迦さまは、長く厳しい修行の末、人が生きていくうえで味わう苦しみのメカニズムを発見しました。
その苦しみから解放されるための智慧はやがて「仏教」となり、今もなお、多くの人びとの幸せのよりどころとなっています。
1.幸せに生きることを目指すブッダ(釈迦)の教え
人間関係の悩み、将来への不安、病気の苦しみ、親しい人との別れ、死ぬことへの恐れ……
人生にはさまざまな苦しみがつきまとい、自分の思い通りにならないことに対して怒り狂ったり、途方に暮れたりすることもあるでしょう。
すべての人が生きていくうえで味わう苦悩について、ブッダは
生きることは、苦しみに満ちている。
それは避けようのない真実であり、人生において完全に思い通りになるものは何一つ無い。
と説いています。
ブッダの説く苦しみとは、単に苦しいことではなく、「自分の思い通りにならないこと」。
「たしかに人生は思い通りにならないけど、うれしいことや楽しいこともいっぱいあるでしょ」
そう疑問に思うかもしれません。
ところが、私たちが「楽」だと感じるできごとをよく観察してみると、必ず「苦」とセットになっているのがわかります。
たとえば、私たちは、恋人との出会いに激しく興奮したり、わが子の誕生にはこの上ない喜びを感じたりするでしょう。
しかし、この世に「死」がある限り、恋人やわが子との別れは必ずやってきます。
このように、楽しいできごとのウラには、苦しみ(=思い通りにならないこと)という一面が必ず隠れています。
生きることは苦しみである。
これは、紛れもない真実なのです。
それでもブッダは、「苦しみに振り回されずに安らかに生きていこう」と、私たちに幸せへの道を示してくれています。
私たちがいのちを授かっているこの世界で、いかに悩みや苦しみから解放されて、今この瞬間をイキイキと生きるか。
この誰もが幸せに生きるための智慧が、ブッダの教え(仏教)なのです。
ブッダの教えには
苦しみはなぜ生まれ、どうすれば苦しみから抜け出すことができるのか。
という共通のテーマがあり、
- 苦しみが発生するメカニズム
- 苦しみから解放される方法
を具体的に示しています。
詳しくは、次の章から解説していきます。
2.苦しみのメカニズムと種類
(四聖諦&四苦八苦)
「生きることは苦である」と説いたブッダは、最初に、苦しみが発生するメカニズムを発見しました。
このメカニズムを四聖諦(ししょうたい)といい、次の4つの真理から成り立っています。
- 苦諦(くたい)
・・・苦しみの正体についての真理 - 集諦(じったい)
・・・苦しみの原因についての真理 - 滅諦(めったい)
・・・苦しみから抜け出すためのロジック - 道諦(どうたい)
・・・その実践方法
【1】苦諦
第一に、苦しみの正体を明らかにすることから始まります。
ブッダは、生きていくうえで味わう苦しみには以下の8種類があると説き、これらを四苦八苦(しくはっく)といいます。
①生 | この世に生まれること |
②老 | 老いること |
③病 | 病気になること |
④死 | いつかは死んでしまうこと |
⑤愛別離苦 | 愛する人と別れること |
⑥怨憎会苦 | 嫌いな人と出会うこと |
⑦求不得苦 | 欲しいものが手に入らないこと |
⑧五陰盛苦 | 心と体を思うようにコントロールできないこと |
日常語にもなっている四苦八苦は、誰もが経験するリアルな苦しみであることがわかります。
【2】集諦
第二に、苦しみの正体をとらえたブッダは、「なぜ苦しみが生まれるのか」を突きとめます。
(先ほど書いたように)苦しみとは、自分の思い通りにならないことです。
ところが、私たちは、その思い通りにならないことを「思うがままにしよう」と考えてしまい、理想と現実のギャップに苦悩するのです。
ブッダは、この
思い通りにならないことを思うがままにしようとする欲望(=執着)
が苦しみの原因であると説いたのです。
【3】滅諦
第三に、ブッダは、苦しみから抜け出すためのロジックを探し当てます。
ブッダは「苦しみには8つの正体がある」という苦諦からスタートし、その苦しみは「思い通りにならないことを思うがままにしようとする欲望」(執着)が原因であることを第二の集諦で突きとめました。
ならば、私たちは、思い通りにならないことを思うがままにコントロールしようとしてはいけない。
そのことに気づいたブッダは、苦しみから抜け出すためには
執着を手放すこと
が必要であると説いたのです。
【4】道諦
(第一の苦諦から第三の滅諦において)苦しみのメカニズムを解明したブッダは、最後に、苦しみから抜け出すための実践方法にたどり着きます。
この修行法については、次の章で詳しく解説していきます。
3.あらゆる苦しみから解放される方法
(八正道)
ブッダは、
- 人生は思い通りにならない。
- だから、執着を手放しましょう。
- そのためには、修業をしなさい。
と説いています。
そして、その修行法として、八正道(はっしょうどう)とよばれる8つの正しい行いを勧めています。
これらの8つの正しい行いをすることによって、あらゆる苦しみから解放され、ほんとうの幸せを手に入れることができるのです。
ところで、八正道は、本来「出家者」(ふつうの生活を捨てて仏教の修業に励む人たち)に向けて説かれた教えです。
そのため、私たち一般人が完全にマスターするのは難しいでしょう。
たとえば、うそをつかないでおこうと思っても、日常生活・社会生活の中では、ちょっとしたうそやセールストークが必要なときもあります。
規則正しい生活を送ろうと思っても、やむを得ず残業や夜勤にあたったり、忙しくて食事を抜いたりすることもあるでしょう。
それでも私たちは、相手にいたわりの言葉をかけたり、休日に適度な運動をしたりと、八正道に向かって限りなく努力することはできます。
現代における八正道とは、私たちにとっての究極の目標であり、誰にでも開かれた幸せへの道なのです。
4.ブッダの教えを暮らしに生かす
生きることは苦しみであり、人生において完全に思い通りになるものは何一つありません。
にもかかわらず、人間はあらゆるものを手に入れようとあくせく動き回り、欲望に振り回されてしまいます。
そう考えると、この世界に満ちあふれる苦しみは、人間の心がつくり出しているといえますね。
人生は思い通りにならないからこそ、執着を手放し、よりよく生きていこう。
ブッダは、そう教えてくれています。
私たちがあらゆる苦しみから解放されるためには、まず、「世の中には思い通りにならないことがたくさんある」という現実を受け入れること。
そこを出発点として、苦しみの原因である執着を捨て、八正道という幸せへの道を限りなく歩んでいくのです。
ブッダは、この八正道をとおして
- 何にもとらわれないこと
- 偏った見方をしないこと
- 他人を思いやること
という大切な心を伝えています。
あらゆる苦しみから解放されて幸せに生きる方法。
それは、日々の暮らしの中でブッダの智慧(八正道)を無理なく実践しながら、今この瞬間を大切に生きていくことなのではないでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。