一見、肌合いが同じと思える仏像たちも、じつは、材料やつくり方にはそれぞれ違いがあります。
時代が進むにつれて、その制作技法も変化し、さまざまな工夫がこらされるようになりました。
1.銅でつくる(金銅仏)
飛鳥時代(592~710年)~
銅でつくった胴体に金メッキをほどこした仏像を、金銅仏(こんどうぶつ)といいます。
日本で最初に使われた制作技法であり、飛鳥時代から奈良時代にかけて流行します。
- 土を盛って中型(原型)をつくる。
- その上にロウを塗って細かい形をつくり、さらにロウを土で覆って外型をつくる。
- 中型と外型がずれないよう固定し、ロウを溶かして出す。
(ロウが入っていた部分が空洞になる) - 上下を逆さまにし、熱した銅を空洞に流しこむ。
- 銅が固まったら外型を取り外す。
- 銅の表面に金メッキをほどこして完成。
代表作
- 法隆寺の釈迦三尊像
- 薬師寺の薬師三尊像
- 東大寺の盧舎那仏坐像[奈良の大仏]
2.粘土でつくる(塑造)
奈良時代(710~794年)~
飛鳥時代に流行した金銅仏には、「加工しにくい」「お金がかかる」などのデメリットがありました。
そこで登場したのが、粘土を盛って仏像をつくる塑造(そぞう)。
素材がやわらかいため、自由に加工でき、より細やかな表現が可能になりました。
- 木に縄や布を巻きつけ、心木(骨組み)をつくる。
- 心木に目の粗い粘土を盛る。
- さらにその上に目の細かい粘土を盛り、形を整える。
- 金箔や彩色をほどこして完成。
代表作
- 當麻寺の弥勒仏坐像
- 東大寺の四天王立像
- 新薬師寺の十二神将立像
3.ウルシでつくる(乾漆造)
奈良時代(710~794年)~
ウルシを塗り固めて仏像をつくる技法を、乾漆造(かんしつぞう)といいます。
塑造と同じように自由に形をつくることができ、乾燥して固まると塑造よりもしっかりとした感じに仕上がります。
乾漆造には、
- 脱活(だっかつ)乾漆造
・・・粘土をベースにした技法 - 木心(もくしん)乾漆造
・・・木をベースにした技法
の2種類があります。
(1)脱活乾漆造
- 仮の心木(骨組み)に粘土を盛り、大まかな形をつくる。
- その上にウルシを塗った布を貼りつけ、乾燥させる。
- 表面の一部を窓のように切り取り、仮の心木と粘土を取り出して中を空っぽにする。
- 新しい心木(より頑丈なもの)を中に入れ、窓をふさぐ。
- 表面に「木屎漆」を盛り、細かい形をつくる。
- 金箔や彩色をほどこして完成。
木屎漆(こくそうるし)とは
ウルシに木や麦の粉を入れて粘り気を出した、パテのような材料
(2)木心乾漆造
脱活乾漆造は工程が複雑であるため、仏像づくりにとても手間がかかります。
そこで、この技法をよりシンプルにした「木心乾漆造」が考え出されました。
- 木材を彫り、像の大まかな形をつくる。
(これを木心という) - その上にウルシを塗った布を貼りつける。
- さらに木屎漆を盛り、細かい形をつくる。
- 金箔や彩色をほどこして完成。
代表作
- 興福寺の八部衆立像【脱活乾漆造】
- 唐招提寺の盧舎那仏坐像【脱活乾漆造】
- 聖林寺の十一面観音菩薩立像【木心乾漆造】
4.木でつくる(木造)
平安時代(794~1185年)~
日本の仏像づくりにいちばん使われてきた素材といえば、やはり「木」。
木を彫ってつくる木造(もくぞう)の仏像は飛鳥時代から存在しますが、主流となったのは平安時代以降です。
木造には、大きく分けて
- 一木(いちぼく)造り
・・・1本の木材から体の中心(頭と胴体)を彫りだす技法 - 寄木(よせぎ)造り
・・・2本以上の木材を組み合わせてつくる技法
の2種類があります。
(1)一木造り
素材となる木には神木(神さまが宿る大きな木)とよばれる不思議な木が使われることが多く、1本の木だけから彫ることへのこだわりがあったようです。
一木造りの製法
(2)寄木造り
一木造りで仏像を彫ろうすると、どうしても大きな木が必要になります。
そこで、小さな木でも仏像をつくれる「寄木造り」が考え出されました。
- 2本以上の木材をブロックのように組み合わせ、そこに仏像全体の下絵を描く。
- それぞれの木材から、体のパーツを下絵にそって彫りだす。
(このときに内部をくり抜いて軽量化する) - パーツを結合させる。
- 表面を仕上げて完成。
(金箔や彩色をほどこす場合もある)
これによって仏像づくりが効率化され、巨大な仏像をスピーディーに制作できるようになりました。
代表作
- 神護寺の薬師如来立像【一木造り】
- 平等院鳳凰堂の阿弥陀如来像【寄木造り】
- 東大寺・南大門の金剛力士立像【寄木造り】
5.石でつくる(石仏)
飛鳥時代(592~710年)~
石を刻んでつくる石仏(せきぶつ)は、仏像が日本に伝わった飛鳥時代から見られる技法。
石を切り出した移動可能なものと、自然の岩壁をじかに彫りこんだ磨崖仏(まがいぶつ)があります。
(移動可能なものについては)お寺に安置されるだけでなく、お地蔵さんのように道ばたにまつられるケースも多く見られます。
自然に溶けこむような姿や、風雨にされされながらも力強くたたずむ様子が、親しみやすくて魅力的です。
代表作
- 浄智寺の布袋尊立像
- 愛宕念仏寺の千二百羅漢像
- 臼杵石仏(磨崖仏)
ここまで代表的な素材とつくり方を紹介してきましたが、このほかにも
- 鉄でできた鉄仏
- 銅の板をたたいて像を浮き出させた押出仏
などがあります。
解説は、以上です。